5月28日午前。
東京・練馬区の、石神井川のほとりに佇むこぢんまりとした斎場に、
溢れんばかりの弔問客が詰めかけた。
収容人数100人の会場に300人超の行列。
その多くは、20歳前後の青年や、10代の学生たち。
1週間前の5月21日未明、練馬区立のA中学校教諭・石井武秀容疑者(37)が
自ら命を絶った。
18日に教え子の男子生徒への強制わいせつ罪で逮捕され、釈放された直後の
出来事であった。
だが、教え子たちの証言から浮かび上がったのは、“わいせつ教諭”とは様相を異にする
ひとりの教師の実像だった。
〈男子生徒にわいせつ容疑 中学教諭を逮捕〉 新聞各社による一報は、
教え子たちに衝撃を与えた。
報道では、トイレの個室に男子生徒を連れ込み、股間を触るなどわいせつな行為に
及んだとされた。
「うそだ、先生がそんなことするはずがない……」 昨年、石井容疑者が
卒業を見送った元教え子の一人は目を疑った。
周りにも、石井容疑者の“加害”を信じる者はいなかったという。
「男女問わず、分け隔てなく本当に誰からも愛された先生でした。
運動部だったこともあってか男子にはスキンシップが多い。
頭を触ったり、肩を組んだり。時には尻を叩いたり、股間を触ることもあったけど、
よくある男子同士のじゃれ合い。正直、気持ち悪いと思ったことは一度もないし、
周りからそんな声を聞いたこともなかった。事実として触ったには触ったんだろう
けど、それっていつものノリじゃないか……。それが僕たちの一致する見方でした」
度を越えたスキンシップは誤解を招きやすい。
でも、先生の人となりを知っていれば、何の誤解も生じなかった。
それが今回は、通用しなかったのだろう。
生徒から愛される先生はすごく少ない。
真面目で生徒思いの先生の結末があまりにも悲しすぎる。
被害者にとっても、今回加害者となってしまった先生にとっても、
少しの誤解で起きた事件。
本当に残念です。